農学国際専攻 海外調査等における安全確保・事故防止マニュアル

農学国際専攻
海外調査等における安全確保・事故防止マニュアル

 1.はじめに
 2.計画と届け出
 3.準備
 4.現地滞在
 5.帰国後
   補足資料1 緊急時対応カード
   補足資料2 海洋調査及びダイビング時の注意事項


1.はじめに

海外における実習・調査・研究には、学内とは異なる様々な危険があり、場合によっては重大な事故や病気で命を落とす可能性もある。海外調査に出る場合には、安全管理と事故防止に万全を期さなければならない。

教員が引率する海外実習などの場合はもちろん、卒業論文・修士論文・博士論文などの調査、たとえ自費によるものや、指導教員が同行しない場合でも、正課に関わる調査である以上、指導教員は学生の安全管理と事故防止に責任を負い、学生はそうした注意事項を守って、安全管理・事故防止につとめる義務がある。本マニュアルは、農学国際専攻所属学生のための、海外調査等における安全確保および事故防止のための指針である。海外調査等を行う場合は、本マニュアルの指示に従わなくてはならない。

万一、事故に遭った場合、被災者は落ち着いて行動して救出のための最善の努力をはかるとともに、指導教員または学科・専攻に知らせなければならない.一方、指導教員と学科・専攻は、事故の程度に応じた対応を速やかにとらなければならない。

安全管理・事故防止のための留意点
1) 「海外研究協力論」を必ず受講すること
2) 適切な計画を立てて、渡航前に必ず届け出ること
3) 入念に準備をすること
4) 現場の状況に応じて、無理をせず計画を変更すること
5) 緊急時の連絡救助体制を確保すること
6) 事故に遭った場合は、落ち着いて被害を最小限にとどめること
7) 事故に遭った場合は、緊急時の連絡体制に従って連絡・救助を求めること

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2.計画と届け出

2.1 計画

1) 計画を立てる際には、指導教員と協議の上、「農学国際専攻海外渡航計画書」(以下、計画書)をまとめる。計画書をまとめることによって、情報収集、現場の状況や調査、危険の予測等になり、それ自体が危険回避・事故防止につながる。また指導教員は学生からの情報に基づき、「海外野外活動安全衛生管理計画書」を作成する。

2) 海外調査の場合、現地の状況の変化などによって、予定していたことができなくなることが多い。過度な計画を立てて縮小するのでなく、最低限やりたい仕事を十分な余裕を持って設定して、現場の状況に応じて追加すること。

3) 現地での緊急時連絡先および連絡方法等を、渡航前に決めておくこと。

4) 初心者はできる限り経験者と同行して、海外調査の方法を習得することが望ましい。危険が予想される調査対象地へは、経験者を中心としたチームで行くこと。

2.2 届出

1) 東京大学が海外渡航を行う学生に義務づけている「学術調査等のための海外渡航申請書」、および帰国後は「学術調査等のための海外渡航帰国届」を教務課専攻支援チームに提出する。なお、どちらの書類も指導教員の押印が必要である。

2) 「農学国際専攻海外渡航計画書」および「海外野外活動安全衛生管理計画書」のコピーを、教務課専攻支援チームに提出する。野外調査が含まれる場合、指導教員は「海外野外活動安全衛生管理計画書」および「農学国際専攻海外渡航計画書」のコピーを環境安全管理室に提出する(危険有害作業、潜水作業、危険な環境条件での作業を含まない場合、出発日の1 週間前まで、それ以外は出発日の2 週間前が締切)。

※ 渡航内容に野外調査が含まれない場合(学会参加・発表のみの場合など)は、環境安全管理室への書類提出は不要だが、専攻支援チームに提出する「農学国際専攻海外渡航計画書」には、「海外野外活動安全衛生管理計画書」のコピーを添付する必要がある。

3) 上記の「学術調査等のための海外渡航申請書」、「農学国際専攻海外渡航計画書」、「海外野外活動安全衛生管理計画書」、および本マニュアルの写しを、事前に父母等の家族に渡しておくこと。

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3.準備

3.1 病気対策

1) 渡航の1ヶ月前には、必ず下記の医師等に電話かメールで予約を取り、渡航地域に応じた病気予防の情報収集を行い、相談すること。これらの病院では渡航前の相談、および予防接種のみならず、帰国後発病した際の治療まで含めて対処してくれる。
東京大学保健センター内科トラベルクリニック(内線:本郷22573 、駒場46168 、柏63040 )
東京大学医科学研究所附属病院・感染免疫内科渡航外来(所在地:東京都港区白金台4-6-1 、電話:03-5449-5560 (受診予約))
国立国際医療研究センター病院国際感染症センタートラベルクリニック(所在地:東京都新宿区戸山1-21-1 、電話: 03-3202-1012 )
東京医科大学病院渡航者医療センター(所在地:東京都新宿区西新宿6-7-1 、電話: 03-5339-3726 (直通))

2) 予防接種は、検疫伝染病予防接種(黄熱病、コレラ、ペスト)、基本的予防接種( BCG 、ポリオ、三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)、麻疹、風疹、日本脳炎)と任意予防接種(狂犬病、A 型肝炎、B 型肝炎)があり、渡航地の状況を踏まえて医師と相談のうえ受けること。なお、予防接種は以下の病院等でも可能。
東京大学保健センター内科トラベルクリニック
東京大学医科学研究所附属病院・感染免疫内科渡航外来
日本検疫衛生協会東京診療所(中央区八重洲1 丁目7-20 八重洲口会館3 階、電話: 03-3527-9135 )
東京都都立駒込病院専門外来-ワクチン外来(文京区本駒込3-18-22 、電話: 03-3823-2101 [代表])

3) マラリア発生地域に渡航する場合には、その対策として国立国際医療センター等でマラリア予防薬(メフロキン:商品名はメファキンエスエス錠275mg )の処方を受けるが、予防薬を試飲して副作用の有無を確認する期間が必要であり、そのために渡航の1ヶ月前には相談に行くことが必要である。

4) 既往症があれば、健康状態を「海外渡航計画書」の該当欄に記入すること。

5) 出張前は寝不足を避け、十分な休養をとり、万全な健康状態で日本を出発すること。

6) 携行医薬品を準備すること。

3.2 保険

正課教育科目の中での海外実地研究(「国際農業と文化実習」の海外実習等)、および大学院農学生命科学研究科において実施する留学プログラムについては、学研災付帯海外留学保険(略称:付帯海学)への加入が必須である。OSSMA ( Oversea Student Safety Management Assistance )サービスは任意加入。それ以外の海外渡航(論文研究等については、各自で必ず損害保険会社の海外旅行保険に加入すること。
・付帯海学制度:研究科経由で海外実習参加者一括申し込みが必要なため、実習担当教員がとりまとめる。保険料の支払いは、個別に行う。詳細については、実習担当教員から説明がある。
・OSSMA について: OSSMA サービスについては以下のサイトを参照のこと。申し込みは原則渡航1 ヶ月前締切なので、余裕を持って申し込むこと。 https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/intl-activities/study-abroad/ossma.html

3.3 その他の準備

1) 調査に必要になる物品、装備、手続き等は経験者に相談してリストアップし、事前に準備しておく。なお、予備試行が必要な携行機材等は事前に動作確認等を行うこと。

2) 海外調査は、治安状況,衛生状況,風土病,危険な生物など,国内とは異なる危険が多い。このような危険について、現地におけるカウンターパートとの連絡を密に取り、調査あるいは現地等に関する情報収集(外務省海外安全ホームページを行う。この際、カウンターパートの現地での連絡先についても確認すること。

3) 緊急事態が生じた際(交通事故や、犯罪被害など)のために、専攻が発行する緊急時対応カード(補足資料1 を参照)を現地に携行すること。また、在外公館(大使館や領事館)に救援を求めることになる可能性もあるので、現地の最寄りの大使館や領事館の住所、電話番号を外務省ホームページにアクセスして把握し、現地に携行すること。

4) 事故の際に速やかに対応できるよう、海外渡航計画書、航空券、海外旅行傷害保険の保険証等の写しを研究室と家族に残していく。

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4.現地滞在

4.1 安全確保

1) 現地におけるカウンターパート等の連絡先、現地(調査地を含め)から日本への緊急連絡方法を確認すること。

2) 現地における緊急時の連絡先である救急車、警察、病院などの連絡方法、位置、設備等を確認すること。

3) 滞在国(地)に関する情報が何時でも入手(新聞、放送、インターネット等)できるように心がけること。

4) 事故防止について、その日の作業において起こりうる危険を十分周知し、作業前に安全打ち合わせを行うこと。

5) 天候に関する情報を収集し、状況によっては調査等を中止または変更すること。野外調査時に雷雨に遭遇した場合には、直ちに安全な場所に避難すること。

6) 調査地での移動に際しては、自ら自動車等の運転を行わず、できる限り現地で運転手付の車(信頼できるタクシーを含む)を借り上げて使用すること。また、私設のバイクや乗り合いバス等これに類するものはできる限り利用しないこと。やむを得ず利用する場合には、交通事故、犯罪等に十分注意し、バイクは必ずヘルメット着用のこと。

7) 滞在国の法律に従って行動し、治安情勢に基づいた安全対策・管理(一般犯罪、緊急事態(テロ、暴動、大規模な事故等)、天災(地震、津波等)、火災、病気等に対して注意すること。なお、滞在国によっては宗教上のタブーにも注意が必要である。

8) 海洋調査及びダイビング調査等における注意点等は、補足資料2を参照すること。

4.2 健康管理

1) 時差、食生活の違い、慣れない生活環境(気候、高地、言語など)によるストレス、飲酒の機会が多くなることなどから、体調が狂い、体力の低下を生じ各種の病気に感染しやすくなるため、食事や睡眠の自己管理が重要となる。

2) 対象地域によっては、衛生状況、風土病、危険な生物など健康を害する要因が多数あることから、健康管理には十分に気をつけること。

3) 予防策として、飲料水(うがいや歯磨き等の水も含む)、氷、食べ物(生もの、果物(既にカットされたもの)、生野菜、乳製品、屋台の食べ物等)など飲食物摂取時、さらにプールや河川等の水等に徹底した注意を払うこと。

4) 健康状態に留意し、体調不良の際は調査を中止すること。海外調査は、学内等での研究以上の体力を必要とすることから、体調管理および休息が必要である。

5) 健康状態が悪い場合には、状況を観察し速やかに同行者(教員)や現地におけるカウンターパート等に連絡し、病院に行くなどの適切な措置を講ずること。それと同時に、在京者(研究室)へ速やかに連絡すること。

4.3 指導教員と渡航学生の連絡

1) 指導教員と渡航学生は、相互に連絡先を把握していることが必要である。そのため、学生は,以下の場合には、必ず指導教員に連絡すること。
 a. 渡航先で大事件・大災害が起きた際の無事確認(電話か、不可能ならばemail で)
 b. 本人の事故・病気等の緊急時
 c. 日程変更時
 d. 現地到着時
 e. 現地移動時の前・後
 f. 帰国時の出発前

2) 指導教員は、渡航学生に定期的に連絡をとるようにすること。

3) 学生から指導教員に緊急連絡があった場合(上記1)のa, b の場合)、指導教員は専攻長、専攻主任、専攻の安全管理担当者、事務部教務課、研究科安全衛生管理担当者等に速やかに連絡すること(補足資料3;連絡先一覧は渡航時に配付する)。

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5.帰国後

1) 帰国後の健康状態には十分に気を付けること。病気によっては、帰国後1ヶ月を過ぎて発病するもの( A 型肝炎、マラリアなど)がある。特に、全身倦怠感、発熱、胃腸症状などの自覚症状が続く場合には、医療機関を受診すること。

2) 帰国時に発熱や下痢のある場合には、空港の検疫所で申請すること。

3) 帰国後、速やかに「学術調査等のための海外渡航帰国届」を教務課専攻支援チームに提出すること。

4) 「学術調査等のための海外渡航帰国届」以外で帰国後提出する書類等も、帰国後できるだけ速やかに教務課専攻支援チームに提出すること。

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補足資料1 緊急時対応カード

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補足資料2 海洋調査及びダイビング時の注意事項

<参考1>「自然地理学実験」乗船実習時の安全指針( 1995 年より受講者に配布)

海洋実習に関する注意
海洋実習は,陸上とは異なり様々な危険を伴います.また,東渚は本来入島が禁じられている場所です.そこで本注意と現場において,船長,教員,指導員が出す注意に従ってください.従わず問題の発生が予測された場合,実習を中止します.

転倒・落水に対する注意
船上は滑りやすく,また他船によって予想しない波がきて船が大きく揺れたり,危険回避のため船が急停止,急加速する場合もあります.また船酔いによって,通常の判断力,運動能力が鈍ります.このため,転倒したり,その結果落水してしまう危険があります.万一落水した場合,スクリューの巻き込みや低い海水温によってきわめて危険です.船上では,安全に対して十分すぎるほどの配慮が必要です.決して落水しないように,以下の注意を守って下さい.
 1.常時,救命胴衣を着用して万一に備えること.
 2.船上では,重心を低くし,むやみに身を乗り出さず,常に船の揺れに注意してなにかにつかまること.
 3.船上では乗船者相互に見張り合い,落水に注意する.
 4.落水者があった場合,すみやかに「人が落ちた」と大声で告げ,落水者から目を離さず,逐次その位置を知らせるとともに,早急に救命浮輪など浮くものを落水者の近くに投げる.
 5.万一落水したときは,あわてず冷静に救助を待つ.救命胴衣は決して脱がず,無駄な体力の消耗を避け,浮いているものがあったらしがみつく.落水に気づかれなかった場合,救命胴衣についている笛をならす.

乗船心得
 1.乗船時には,船内の保安用具(救命浮輪,消火器など)の所在を確認しておく.
 2.実習時の服装について(1) 靴はかかとが低くすべりにくく,落水した場合脱ぎやすいものを着用する(デッキシューズ,運動靴など).(2) 海上は冷えるので,防寒に考慮する.また水を含んで重くならずかつ脱ぎやすいものを着用する(綿トレーナーなどはあまりよくない).(3) 雨具(カッパ)の用意をする.
 3.船上では所定の場所に位置し,みだりに片側によらない.
 4.航行中は繰船者の視界を遮ることや,じゃまをしないようにする.
 5.喫煙は禁止.船から絶対にものを捨てない.
 6.乗船中に気分が悪くなったり体調が悪くなったものは速やかに申し出て下さい.

干潟での注意
 1.決してものを捨てず,実習のために必要な試料以上のものを採取しない.
 2.桟橋,公園内,往路帰路でも事故に注意する.

<参考2>茅根研究室潜水調査規定2002 年策定

1.スクーバダイビングの場合
 1) Cカードと潜水士を取得していること.
 2) 必ず2名以上で潜る.

2.素潜りの場合
 1) 2名以上で潜る(浅瀬の場合,船を出して船頭さんにみてもらうことも可とする).
 2) チームの中で少なくとも1名は,Cカードと潜水士を持っていること.

3.共通事項
 1) ダイビングの一般的な安全規定(バディシステム,機材の保守,トラブルへの対処)を守る.
 2) ダイビングフラッグを掲げる.
 3) 保険をかける(学研災,旅行者保険).
 4) 宿泊所に「何時までに戻る」旨記載する連絡板を設置し,その時間までに戻ってこなければ,関係者に連絡するとともに,捜索してもらうようにする.
 5) 基礎体力・泳力をつける(クロールで連続200 m泳が最低ライン).Cカードを持っているからといって,スキルが十分であるとは限らない.必ず教員がスキルを確認する.
 6) 無理な計画をたてない.事故防止について,様々な機会に周知し,作業前に安全打ち合わせを行う.
 7) 陸上でも,レンタカーの事故などに注意する.学部学生の運転は不可.
 8) 茅根がフィールドに同行していない際は,緊急時,計画変更時はもとより,毎日定時に連絡する.

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