タバコ毛状根を用いたマラリア伝搬阻止ワクチンの開発
手柴 瑞代

《研究の背景&目的》

本研究では、全世界の人口の40%以上を越える人々が移住する熱帯、亜熱帯の90カ国あまりに分布し、年間3〜5億人が感染、死亡者は150〜270万人にも及ぶと推定されるマラリアに着目した。 

マラリアワクチンには、

1)ヒトへの感染型であるスポロゾイトを標的とする感染阻止ワクチン

2)人体内で増殖する赤血球型マラリア原虫を標的とする発病阻止ワクチン 

3)媒介蚊体内のマラリア原虫の発育を阻害する伝搬阻止ワクチン

の3種類あり、伝搬阻止ワクチンの原理は次のようである。蚊の中腸内ステージの虫体にのみ特異的に発現する表面蛋白でヒトを免疫し、この蚊ステージ虫体の表面蛋白に対する抗体を作らせる。そして、この免疫されたヒトから吸血した蚊の中腸内では発育した虫体とヒトの抗体とが抗原抗体反応を引き起こし、原虫の発育を阻害する。その結果、媒介蚊によるマラリアの伝搬をブロックすることができる、というものだ。ヒトには熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫の4種が感染する。これら伝搬阻止ワクチン開発の基本的知見を得るため、本研究ではヒトに適用する前段階として、マウスに感染するマラリア原虫Plasmodium yoeliiの抗原蛋白質Pys25をターゲットに選び、実験材料には、生長が速く、大量培養や再分化の系が確立されているタバコの毛状根を選んだ。  

実験手順は、

1)Pys25の組み換えプラスミドの構築、 

2)アグロバクテリウム法を用いたタバコへの感染

3)毛状根の大量培養

4)タンパク質を抽出し、Western blotting法、ELISA法等による目的タンパク質の同定

5)マウスを用いた伝搬阻止活性の検討

といった流れで行なう。

《現状&今後》

現在コンストラクトの構築の段階で難航しているので、別に田形さん達が行なっているイネの研究の摂食実験の予備実験として、マウスにどのようにコメを食べさせるかを調べる実験を行なっている。マウスが1日で最大何g食べるか、そしてどういった形状で与えるのが最もよく食べるのか、といったことを調べ、最終的にCTBを組み込んだコメと、通常のコメにCTBを混ぜ合わせたものを食べさせて、CTBの有無、またCTBの入れ方による抗体価の違いを調べる。

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