「NGO」はNon‐Governmental Organization(非政府組織)の略で、もともとは国連の場で、国連機関と協力関係にある政府以外の非営利組織を指すのに使った言葉が広まったものである。最近では、NGOは開発・経済・人権・人道・環境等の地球規模の問題に取り組む非政府・非営利の組織を指すのに使われている。
◆ 日本の国際協力NGOの歴史日本における国際協力NGOの誕生は、労働問題、原水爆問題、公害問題などが大きな社会問題となり、数多くの市民運動団体が形成された1690年代前半に遡る。その後、1979年に始まったインドシナ難民(※)の大量流出問題を契機に、活動が活発になる。外務省によると、現在、国際協力に取り組んでいる日本のNGOの数は、全国に400以上あると見られている。
ここでは「国際協力NGOダイレクトリー2004」(第一部:226団体)のデータをもとに、日本の国際協力NGOの活動状況を見ていく。
(1) 活動対象分野日本の国際協力NGOの活動分野は、開発・環境・人権・平和の4つに大きく分けられる。開発の分野では、地域開発、農業指導、保健医療活動など。環境の分野では、植林、砂漠化防止活動など。人権の分野では、難民や被災者の人権擁護活動など。平和の分野では、軍備撤廃、地雷廃絶などの活動が行われている。
(2) 活動形態海外に向けられた活動としては、資金助成、物資供給、人材派遣、日本への研修生の受け入れが挙げられる。これらの活動を実施する上で、海外に日本人の駐在員を置いている団体もあれば、現地のパートナー団体を通じて支援活動を行う団体もある。国内に向けては、情報提供、地球市民教育などの活動を通じて、人々の啓発を行っていったりしている。
また、政府や国際機関などに政策上の提言を行う活動も活発になりつつあり、政府も、国民参加型の中心となるNGOとのパートナーシップを強化させることが大切であると述べている。
(3) 海外での活動地域活動対象国は日本も含めて世界103カ国になり、中でもアジアを対象とするNGOが177団体と多く、次にアフリカ48団体、中南米23団体、旧ソ連・東欧23団体、オセアニア9団体と続く。アジアでは26カ国に広がり、フィリピン、タイ、カンボジア、ネパール、インドで特に多くの団体が活動している。アフリカでは38カ国が対象になっていて、特定の国に集中するのではなく、広く分布しているのが特徴である。その他、中南米はペルー、エクアドル、ブラジルなど17カ国、旧ソ連・東欧では、ウクライナ、ベラルーシなど15カ国、オセアニアは、パプアニューギニアなど6カ国となっている。
(4) 財政226団体の2002年度における総収入額は、約266億7469万円であった。単純に平均すると1団体当たり約1億1803万円になるが、これは少数の大規模なNGOが存在するためで、実際には約43%の団体が2000万円以下の規模で活動している。
NGOの財源は、全体で見ると、会費が11.2%、寄付金が39.0%、事業収入(物品の販売やイベント参加費からの収入)が8.4%、基金運用が0.3%(ここまでが自己財源)、受託事業収入が10.7%(政府3.8%、国連機関5.1%、民間1.8%)、助成金収入が9.9%、その他の収入が5.6%、前年度からの繰越金が14.9%となっている。
(5)スタッフ226団体のうち、176団体で1539人が有給専従・有給非専従スタッフとして活動している。そのうち、海外で活動しているスタッフが286人、国内では1253人のスタッフが活動している。
◆ 今後の課題日本のNGOは、長い歴史を持ち、豊富な途上国支援の経験を持つ欧米諸国のNGOと比較すると、まだまだ拡充・強化される余地は大きいと考えられる。近年、日本のNGOも評価や理解を得るようになり、政府もNGOとのパートナーシップを重視し、連携体制により国際協力を行う体制がようやくととのってきたが、現実は、まだまだ資金や人材、情報収集等の面で多くの困難に直面している。
活動内容や活動の中で得られた情報を広く公平に知らせろことで、市民のさらなる理解を高め、また、適切な政策の提言を行うためにも、各分野において、NGOが専門性や実施能力を高めていくことも、今後の大きな課題といえる。
◆ NGOの例大規模:国境なき医師団,アムネスティ・インターナショナル
名称 | 国境なき医師団日本 |
過去2年の事業内容 | アンゴラでの内戦終結に伴い判明した大規模飢饉への対応 パレスチナでの紛争下の市民への基礎医療、心理ケア リベリアでの内戦拡大による負傷者、避難民の急増に対応 コンゴでのエイズ患者へのARV治療提供や戦闘地域での診療 アフガニスタンでの栄養改善、母子保健、移動診断 国内での証言活動、広報活動、資金援助の呼びかけなど |
スタッフ | 有給専従 国内23名 無給非専従 国内9名 |
会員 | 一般5162名 学生会員231名 |
総収入 | 1,233,321,741円 (会費4.2% 寄付金86.5% 繰越9.2%) |
総支出 | 1,233,321,741円 |
名称 | アムネスティ・インターナショナル日本 |
過去2年間の事業内容 | 世界各国への人権侵害への働きかけ 各国で展開されている会員活動との連携 暴力の連鎖を断つキャンペーンの展開(国内) 世界の人権侵害の情報提供(国内) 日本国内の死刑,難民、被拘束者にかんする取り組み |
スタッフ | 有給専従 国内7名 有給非専従 国内4名 |
会員 | グループ会員1214名 個人会員2035名 賛助会員2961名 非営利団体70団体 |
総収入 | 173,106,041円 (会費42.6% 寄付金33.9% 事業収入25.8% 繰越11.2%) |
総支出 | 173,106,041円 |
中規模:アジアアフリカと主に歩む会、アジア女性センター
名称 | アジア・アフリカと共に歩む会 |
事業内容 | 英語の本を集めて南アに送る 移動図書館を南アに送る JICA委託で南アでエイズ予防教育を行う 南アの学校のトイレ整備 |
スタッフ | 無給2名 |
総支出 | 5,303,172円 |
名称 | アジア女性センター |
事業内容 | タガログ語・中国語によるホットラインの開催 7ヶ国語リーフレットの作成 当事者プログラムとしてのパソコン教室 子供プログラムとしてのアートセラピー |
スタッフ | 有給5名 無給35名 |
会員 | 個人351名 法人50団体 |
総支出 | 14,911,606円 |
JANICが2年おきに改訂・発行している。今回で9回目の発行。開発・環境・人権・平和などの分野で国境を超えて活動する日本のNGOの概要と最新の詳細なデータを全国規模で収録した、国際協力市民団体要覧。
事業内容 | 国際協力を主目的とし開発協力や教育・提言といった活動を行う団体間の、連絡調整やネットワーキングを行うことを主たる事業とする | |
総数 | 33団体(全掲載NGO354団体、一部重複なし) | |
規模 | 第1部 | 8団体/226団体(=3.5%) 条件; 活動実績2年以上 前事業年度の国際協力事業費支出実績が50万円以上 年間財源の25%以上または100万円以上が自己資金 |
第2部(1) | 5団体/76団体(=6.6%) 条件; 活動実績1年以上 前事業年度の国際協力事業費支出実績が50万円未満 |
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第2部(2) | 2団体/52団体(=3.8%) 条件; 活動実績1年以上、十分な回答のなかったもの (前事業年度の国際協力事業費支出実績は問わない) |
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その他掲載なし | 18団体 (理由として考えられること;活動実績1年未満、国際協力が主目的でない団体である、など) |
日本には、国際協力NGOが約400団体存在しており、これらの団体を横につなげているのがJANICである。
日本以外の先進国にもJANICのような機関があり、その国のNGOの支援を行っている。また、各国にあるこのようなNGO支援センター間で、会議を開こうとする試みがなされている。
世界全体における、貧困、飢餓、衛生、人権、教育の状況
2.NGOとは何か?団体数、会員数、財政状況の推移
4.日本のNGO活動の課題と展望NGOが、国内外の政治において無視できない重要な役割を担うアクター(行為主体)となった、と容易に同意が得られる時代になってきている。国境を越えるグローバルな問題群への対応においては既存の国益を行動ベースにした国家中心のシステムでは対応しきれず、変わって機動性、柔軟性を備えつつ地球益を追及できるNGOの活動が評価されてきているのだ。このNGOの国境を越えたネットワーク化と影響力の増大に対応して、今「NGOが市民社会を促進する」とよくいわれるようになった。しかし、この復興した「市民社会」の概念は非常に多義的曖昧的で、ともすれば異なる観点を混同する危険性がある。
「市民社会」とは??この問いに答えるのに参考になる「市民社会論の整理」を東京大学教養学部遠藤貢助教授が行っているので紹介したい。
◆「市民社会(Civil Society)」という概念の系譜17C | ・ヘーゲル:国家と家族の中間として存在 ・マルクス:経済主体として還元 |
20C | ・グラムシ:政治、文化の上部構造。民主主義的闘争実践の場 ・トクヴィル:「国家vs市民社会」の従来型から、「国家vs政治社会vs市民社 会」とした。Guvermentに対する第二の「公共」。 |
この三つの軸から分けられる8空間による類型化
・環境分野を中心に見るワプナーは、「グローバル市民社会」とその意義、役割を次のようにとらえる。
・市場経済の主導するグローバル化を「上からのグローバル化」とし、それに対置、あるいは対抗する「下からのグローバル化」の担い手とする考え方ともいわれる。
このGCSについての批判的検討は別途資料で説明する。
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