・全世界に蔓延するBLVによる白血病発症機構の解明とその制御方法の確立
当研究分野は、1982年以降、一貫してBLVの研究を行ってきました。当初は大きな問題として認識されてこなかったBLVは、近年国内外で爆発的に感染率が上昇し、大きな経済被害を与えています。当研究分野では、独自に発見した白血病発症に感受性と抵抗性を示す主要組織適合抗原(MHC) 遺伝子を利用した、①白血病発症抵抗性種雄牛の作出による育種戦略、②発症しやすい感受性牛に特に効果の高いワクチン開発、③抵抗性/感受性牛の判別技術を応用した新しいBLV清浄化プログラムの構築、などの牛白血病制圧戦略に取り組んでいます。また、日本初のBLV遺伝子診断薬・BLV-CoCoMo-qPCRを製品化し、従来の抗体検出系では判定できなかった6ヶ月未満の仔牛のBLV感染の判定や陽性牛の感染伝播リスクの高低を識別化するためのツールとして利用できます。ワクチン開発では、スーパーコンピューターを用いたインシリコ技術を駆使した抗原設計や、不活化ワクチンに加えて細胞性免疫および液性免疫を強く誘導する生分解性ナノ粒子である炭酸アパタイトやウイルス様粒子などのワクチン・デリバリー技術を応用する事で、世界初のレトロウイルスワクチンの製品化を目指しています。 ・HIV-1によるエイズ発症機構の解明及び創薬研究
エイズの原因ウイルスであるHIV-1は、レトロウイルス科の中でも特に高度に進化していて、レトロウイルスに共通な構造遺伝子であるgag、 polおよびenv以外に、調節遺伝子であるtatとrev、さらにアクセサリー遺伝子であるnef、vpu、vpr、vifを有しています。中でもvpr遺伝子産物は核移行・転写活性化・細胞周期停止・アポトーシス・スプライシング阻害などを行う多機能蛋白質で、特にHIV-1の潜伏化を担う非分裂性リザーバー細胞において重要な役割を担っています。当研究分野ではこのVprに焦点を当て、vpr遺伝子産物と相互作用する新規細胞内因子の同定と作用機構の解明を通じて、未知の複製機構の解明とそれを標的とした新規複製阻害剤の開発を行っています。 ・インフルエンザウイルスの複製機構の解明と創薬研究
既存の抗インフルエンザ薬では既に耐性ウイルスの出現が報告されている。当グループでは、ウイルス内部の蛋白質である事から、従来薬剤標的とされてきたインフルエンザウイルスの外膜タンパク質M2やノイラミターゼに比較して亜型間の保存性が高いNucleoproteinを標的にする事により、多くの亜型に有効で、耐性化にも抵抗性を示す新規阻害薬の開発を目指しています。
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フィリピンでの採材風景 |
アルゼンチンでの採材風景 | |