従来完全競争市場として取り扱われていた農産物市場に関して、不完全競争性の程度を示すパラメータを導入した新しいタイプの同時方程式モデル体系を構築し、その研究成果を国際貿易モデル分析に応用し、WTO(世界貿易機関)の農業交渉や活発化するFTA(自由貿易協定)の締結交渉による農産物貿易自由化の国民経済・環境への影響や国内関連政策の国際貿易へのインパクトの解明、日本だけでなくFTAによる域内国や域外国を含めた世界の様々な階層への影響とその調整政策の解明に取り組んでいる。
我が国がアジアとともに発展を持続するためには、狭義の経済効率性のみでなく、 Equitable distribution ofwealthに配慮し、アジア農村の貧困を緩和し、アジア諸国間の100倍もの所得格差の緩和に資するような経済連携強化を目指さねばならない。加えて、生態系や環境の保全にも配慮した多様な農林水産業の共存につなげねばならない。この困難な調整を可能にするシステムを具体的に議論できるフレームワークを提供していきたい。