総合研究博物館 遺体科学研究室
■ 専門分野 遺体科学、比較解剖学
1991年 東京大学農学部獣医学科卒業
1992年 東京大学大学院農学系研究科獣医学専攻博士課程退学
1992年 国立科学博物館動物研究部 研究官
2005年 京都大学霊長類研究所 教授
2008年 東京大学総合研究博物館 教授
専門を問われたら、解剖学と答えることもあった。死んだ動物の形を観察するのが、私の基本姿勢だからだ。しかし、解剖学という日本語は、残念ながら、遺体を研究する科学を指すのではなく、医療系実学職業教育のカリキュラムのコマを指すために使われる場合が圧倒的に多い。それとはまったく逆に解剖に真理探究の場を創ろうとする私は、カリキュラムのための擬似解剖作業に甘んじているのではないことを明示するために、自分の学問をあえて「遺体科学」と呼んでいる。遺体科学は、動物遺体研究の、もっとも新しく、もっとも深く、もっとも執着心に富んだ営みだ。自然誌学、比較解剖学、古生物学、画像解析学などを集合させ、総合と継承の科学哲学を旨とする。動物遺体の無制限無目的収集を重ね、遺体から真実を解き、遺体を未来に引き継いで、知に貢献する。成果は、運動機構のマクロ解剖解析、標本形状の三次元データ蓄積、形態変異論の定量的議論などに結実してきた。遺体を凝視し、遺体にふれ、五感を駆使して遺体に取り組む遺体科学者にとって、研究する自らを言葉に表現することは、必須の責任だ。その責任を果たしつつ、動物園、猟師、飼育者、作家、彫刻家といった遺体を取り巻く人々や社会とともに、遺体と人間の関係の未来を論じ、遺体研究を文化の基礎に位置づけていくことが、狙いの核心にある。
●オオアリクイの下顎運動機能の定量的解析
●ジャイアントパンダの肢端把握機能に関する三次元画像解析
●テンレック類のロコモーション放散に関するマクロ機能形態学的検討
●ニワトリの家禽化と品種創生における比較機能形態学による育種志向の解析
●日本列島および台湾産イノシシの地理的変異に関する骨学的検討
●アジアゾウ上唇の骨格筋構築とその運動機能の解析